京都地方裁判所 昭和63年(ワ)2963号 判決 1993年3月16日
原告
前田武彦
同
山田達雄
同
澤村秀雄
同
細川晃平
同
安田孝之
同
奥村秀雄
同
広田夏夫
同
加地義
右原告ら訴訟代理人弁護士
飯田昭
同
村井豊明
同
籠橋隆明
被告
大同建設株式会社
右代表者代表取締役
小森保彦
右訴訟代理人弁護士
石川良一
主文
一 被告は、原告加地義、同細川晃平、同澤村秀雄、同広田夏夫に対し各金二二万円、同奥村秀雄に対し金七二万九七八四円、同山田達雄に対し金二四一万三四〇〇円、同前田武彦に対し金四四三万二六七〇円、同安田孝之に対し金九六万四〇九五円及び右各金員に対する昭和六三年一二月二三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その八を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。
四 この判決は、原告らの勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告加地義及び同細川晃平に対し各金五五〇万円、同奥村秀雄に対し金五五五万八六〇〇円、同山田達雄に対し金六三九万四〇〇〇円、同澤村秀雄及び同広田夏夫に対し各金四四〇万円、同前田武彦に対し金七三八万二七〇〇円、同安田孝之に対し金五〇五万二九〇〇円及び右各金員に対する昭和六三年一二月二三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
3 仮執行免脱宣言
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 被告による高層共同住宅の建設
被告は、昭和五九年一月二六日、訴外綿谷はる江外二名から別紙物件目録一記載の土地(以下「本件敷地」という。)を買い受け、昭和六三年一一月、本件敷地上に別紙物件目録二記載の鉄筋コンクリート造り地上七階建の共同住宅(以下「本件マンション」という。)を建築完成させた。
本件マンションは、敷地面積7464.94平方メートル、建築面積4481.16平方メートル、高さ約19.98メートル、地上七階建、総戸数一六九戸(うち店舗二戸を含む)であり、またA、B、C、D、Eの五棟から構成されており、A棟とB棟は接続部分を入れて長さ110.73メートル、C棟は長さ44.60メートル、D棟は長さ六三メートル、E棟は長さ四二メートルである。そしてその南側は三条通りに面し、東側の隣接地境界線から約三メートル、北側の隣接地境界線から最短部分で約三メートル、西側の隣地境界線から約四メートルから六メートルの位置に建築されている。
2 原告らと本件マンションとの関係
原告前田武彦及び同加地義は、本件敷地に隣接した土地とその土地上の木造二階建の家屋を所有して家族とともに居住し、同安田孝之は、本件敷地に隣接した土地とその土地上の平屋建家屋を所有してその家屋を五世帯に賃貸しており、同細川晃平、同奥村秀雄、同山田達雄は、本件敷地に隣接した土地を借り受けてその土地上に木造二階建の家屋を所有して家族とともに居住し、同澤村秀雄、同広田夏夫は、本件敷地に隣接した土地を借りてその土地上に平屋建の家屋を所有して家族とともに居住している。
本件マンションと原告ら所有家屋との位置関係は、別紙第一図記載のとおりである。
3 本件マンション建設による原告らの被害
本件マンションのすぐ西側に存在する車折神社の周辺は、都市計画法及び京都市風致地区条例において、風致地区付則第二項地域に指定されており、高さ一五メートルを越える建物の建築は認められていない。本件敷地は右風致地区から僅かに離れているため、いずれも第二種住居専用地域であり、高さ二〇メートルまでの建物の建築が可能であるが、実際には木造二階建住宅の立ち並ぶ落ち着いた地域であり、本件マンションが建設されるまでは、高層建築物は皆無であった。
また本件敷地は従来、自動車置場や洛陽女子高等学校のグランドとして利用されてきた土地であり、本件マンションが建設されるまで住宅地として利用されたことはなく、そのため、原告らは、西に嵐山、岩田山、松尾山、愛宕山、北に衣笠山、東には遠く比叡山、東山三六峰を眺望することができ、ほぼ一日中完全な日照、通風を確保していた。
ところが本件マンション建設により、原告らは次に述べるとおりの被害を被った。
(一) 工事中の被害
(1) 粉塵による被害
本件マンション建築工事により土埃が舞い上がり、原告らの家屋内に入り込んで堆積するため、原告らは洗濯物や布団を外に干すことができないほか、毎日掃除機と雑巾がけによる清掃を行わなければならなかった。
(2) 振動による被害
昭和六〇年一二月から昭和六一年五月までの間、基礎工事のため大型ダンプカーなどの大型車両が敷地いっぱいに走り回ることやショベルカーで本件敷地を掘削した際に出た土や岩石を原告らの土地の境界線付近に放り投げるように積み上げることで、原告らは地震のような振動を感じた。昭和六二年一〇月の工事再開以降は建設中の本件マンションと原告らの土地の境界線の間を大型ミキサー車などの大型車両が通行するため、原告らは、早朝から夜遅くまで地響きのような振動に悩まされた。
(3) 騒音による被害
原告らは、午前七時ころから始まる工事車両による騒音や深夜午前三時ころまで続くこともあるコンクリート打設作業の騒音によって、睡眠を妨害された。
(4) 悪臭による被害
原告らは、大型ミキサー車や大型ダンプカーなどの大型車両の排気ガスや本件マンション工事に使用された防水用コールタールの悪臭により気分が悪くなるほどであった。
(5) 交通の危険・妨害による被害
本件マンションが面する三条通りは、道幅が狭いにもかかわらず、路線バスが通る幹線道路で交通量も多く、本件マンションの建築工事のため大型車両の出入りが多くなり、本件マンション出入口附近で大変な交通妨害が生じ、通行が危険となり、原告らは、大型車両を避けるようにして通行せざるをえず、原告らの子供たちは、三条通りを回避し、遠回りして通学せざるを得なかった。
(6) プライバシーの侵害
本件マンションの工事中、工事人によりマンションから原告らの家屋を覗き見られるようになり、原告らは、一日中カーテンを閉めたままの生活を余儀なくされるようになった。
(二) 完成後の被害
本件マンション完成後は前記のような本件マンションの構造から、原告らは、次のような被害を半永久的に被ることとなった。
(1) 日照阻害
原告らは、本件マンションの建築により、冬至を中心にして、北側に居住する原告加地は一日中、西側に居住する同細川、同奥村、同山田、同澤村、同広田は午前中、東側に居住または建物を所有する同前田、同安田は午後の日照を、それぞれ阻害され、そのため原告らは、日中も点灯をする必要がある、暖房をする時間・量が増える、家屋がジメジメしてカビ臭くなる、庭の草木も育ちにくくなるといった被害を被っている。
なお、日影図における日影の計測地点は、第二種住宅専用地域に対する建築基準法の要求では、通常グランドレベル四メートルの地点であるが、本件敷地周辺は、平屋建又は二階建家屋が多く、原告らの居住の中心は一階部分にあるという生活実態からいうと、本件の場合において日照の計測地点は、グランドレベル〇メートルで計測し、その結果に基づいて日照が害される程度を判断すべきである。
(2) 眺望の侵害、圧迫感
本件マンションの建築により、原告らが有した従前の眺望は、巨大なコンクリート製のスクリーンのような本件マンションによって遮られ、巨大なコンクリートの壁のような本件マンションは、原告らに圧迫感を与えている。
(3) 災害の危険
本件マンションには、敷地内の主要道路が三条通りからA棟の南端までしかなく、それより以北は屈折した狭い道路しかないため、高層階消火用の消防自動車(ハシゴ車)がA棟の南端までしか入れず、もしA棟、C棟、D棟の高層階で火災が発生した場合には、消火活動ができないことから、原告らの家屋に類焼する、また、燃焼物や爆発物が飛散し、有毒ガスが蔓延するなどの被害が発生する危険がある。
(4) プライバシーの侵害
本件マンションは七階建であるため、原告らの家屋は三階以上の多数の居住者から四六時中見下ろすように覗き見され、プライバシーを侵害されている。
(5) 騒音による被害
原告らは、本件マンションに音がよく反響するため、三条通りの通行車両の音、マンション居住者のドアの開け閉めの音、話し声や布団を叩く音、掃除機の音などの騒音に悩まされている。
(6) 風害
本件マンションにより、いわゆるビル風が発生し、原告らの家屋に強く吹き付け、原告らは、家屋の損傷(屋根瓦のズレなど)や強風によってガラス戸などが響く音とビュービューという風の音に悩まされるといった被害を受けている。
(7) 土地建物の価値の低下
原告らの家屋は良好な住環境にあったが、隣地に本件巨大なマンションが建設されたため、住環境が破壊され原告らの土地建物の価値は著しく低下してしまった。
(三) 家屋の損傷
本件マンションの基礎工事の際の深さ三メートル余に及ぶ本件敷地の大規模な掘削や、大型ダンプカーや大型ミキサー車等大型車両の通行による激しい振動によって、原告前田、同山田、同安田、同奥村らの家屋は、傾斜、沈下、歪み、壁の亀裂・剥落、屋根瓦のズレなどの損傷を受け、その補修が必要になった。
4 被告の責任原因
原告らは、前記のとおり、本件マンションの工事中には振動、騒音、粉塵、悪臭、ププライバシー侵害、交通の危険に、マンション完成後も日照阻害、騒音、プライバシー侵害、眺望の侵害、災害の危険、土地家屋の価値の低下などにそれぞれ見舞われ、その精神的肉体的苦痛は甚大であって、原告らが受忍する限度をはるかに越えており、また、本件マンション工事により原告らの家屋は損傷を被っているから、被告の本件マンション建築行為は原告らに対する不法行為を構成し原告らは次のとおりの損害を被った。
5 原告らの損害
(一) 慰謝料
前記3の被害による精神的苦痛を慰謝するためには(なお前記3(二)(7)の土地建物の価値の低下を算定することが困難であるので、慰謝料を請求することとする。)、原告加地及び同細川は五〇〇万円、同奥村、同山田、同澤村及び同広田は四〇〇万円、同前田及び同安田は三〇〇万円が相当である。
(二) 家屋の損傷による補修費用
原告前田宅 四〇八万二七〇〇円
原告山田宅 一九九万四〇〇〇円
原告安田宅 一七五万二九〇〇円
原告奥村宅 一一五万八六〇〇円
(三) 弁護士費用
原告らは、本件損害賠償請求等に関する一切の行為を弁護士に委任し、手数料及び報酬として、それぞれ原告らの損害額の一割を支払うことを約した。
6 よって、被告に対し、不法行為による損害賠償として、原告加地及び同細川は各五五〇万円、同奥村は五五五万八六〇〇円、同山田は六三九万四〇〇〇円、同澤村及び同広田は四四〇万円、同前田は七三八万二七〇〇円、同安田は五〇五万二九〇〇円及び右各金員に対する訴状送達の翌日である昭和六三年一二月二三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1及び同2の各事実は認める。
2 同3の事実のうち、本件敷地のすぐ西側に車折神社があること、車折神社の周辺が風致地区付則第二項地域に指定され高さ一五メートルを越える建物の建築は許されないこと及び本件敷地が第二種住居専用地域であること、本件敷地が以前グランドとして使用されていたことは認めるが、その余の事実は否認する。
たしかに、原告らが主張するように車折神社の周辺は風致地区であるが、その範囲はごく一部であり、その風致地区となっている部分を除けば、嵐山まで第二種住居専用地域がひろがっている。そして、本件敷地が面している三条通りから北へ二五メートルまでは準工業地域であり、本件敷地周辺は次第に都市化されつつあり、中高層化の波が及んでいる地域である。
3 同4の事実は否認する。本件マンションの建築は原告に対し不法行為となるものではない。すなわち本件敷地の周辺の状況、本件マンションが建築基準法に適合する建物であること及び主張される被害の程度を勘案すると、原告らが主張する被害は受忍限度内のものである。
4 同5(一)(二)の事実は否認する。同5(三)の事実は不知。
第三 証拠<省略>
理由
一請求原因1及び同2の各事実は当事者間に争いがない。
二請求原因3の事実について
1 本件マンションが存する嵯峨朝日町が車折神社のすぐ東側にあること、車折神社の周辺が風致地区付則第二項地域に指定され、高さ一五メートルを越える建物の建築は許されないこと及び本件敷地が第二種住居専用地域であることは当事者間に争いがない。
2 <書証番号略>及び証人山田紀子の証言並びに検証の結果によれば、以下の事実を認めることができる。
本件マンションが面する三条通り及びその北側は、細長く二五メートル幅で準工業地域となっている。この準工業地域は三条通りに沿って東へ約七〇〇メートル程続き、そこから東は三条通りを挾んでそれぞれ二五メートル幅で近隣商業地域となっている。
これらの準工業地域と近隣商業地域を除けば、本件マンション敷地の附近は第二種住居専用地域かあるいは住居地域がひろがり、本件マンションの西約五、六〇メートル程度のところに車折神社周辺の風致地区付則第二項地域が存在するほかには、このような風致地区は本件敷地近辺にはなく、右京区内においても風致地区は車折神社周辺の他に二、三箇所が点在するのみである。
本件敷地附近は、たしかに、二階建の住宅が立ち並ぶ地域であり、その中を狭い生活道路が走っているが、ちらほらと五階建程度の建物も建ち始めており、本件マンションの建設されたころは、都市化が及び始めているといえる。
また本件敷地は、材木置場、モータープール、学校のグラウンドとして利用され、あるいは仮設の建築物が建てられたりしたことがあったが、原告らの眺望や日照を遮る大きな建造物がいままで建造されたことがなかった。
3 そこで本件マンション建設による原告らの被害について判断する。
(一) 工事中の被害について
(1) 粉塵による被害
<書証番号略>、検証の結果、証人山田紀子及び同片山利明の各証言並びに原告前田武彦及び同加地義各本人尋問の結果によれば次の事実を認めることができる。
昭和六〇年一二月に開始された基礎工事では、本件マンションの基礎を設置するために約三メートル程の深さで本件敷地が掘削され、その際に掘り出された土は、本件敷地南東側にショベルカーで小山のように盛り上げられた。この基礎工事のためには大型車両が本件敷地を走り回っていた。本件マンションは、まず、E棟の地下部分に浄化槽とE棟の基礎部分を作り、それからD棟C棟B棟A棟の順で建ち上げられ、E棟の地上部分が最後に作られた。基礎工事が終了し、E棟の浄化槽と地上のピットまで出来上がり、C棟B棟の基礎部分とD棟の一階部分が出来た昭和六一年五月、京都市開発審査会の勧告により一旦工事は一時中止され、約一年五ヵ月後の昭和六二年一〇月に再開されたが、この中止により、完成予定が大幅に遅れたことから、被告は本件マンションの完成をできるだけ急いだ。工事は、まず、D棟を建ち上げ、次にC棟、B棟、A棟の順で建ち上げたが、D棟、C棟及びB棟を建築中は、本件敷地の東側には何も建てられていないことから、この部分を工事用車両が通行し、資材等が運び込まれ、A棟を建ち上げている際には、C棟、B棟とA棟の間を工事用車両は通行するとともに、A棟と隣地境界との間も工事用車両が通行した。
マンション建設の際に行われるコンクリート打設の作業はミキサーカーでコンクリートを流し込み、その後ある程度コンクリートが固まってからコテ押えの作業をするものであるが、この作業は気温に左右され、夏であれば二時間位でコンクリートが固まりコテ押え作業に移れるが、冬場は固まるまでに四、五時間かかり、コンクリートが固まっていく順に、一回にして三〇分間位でコテ押えの作業も行われていく手順となる。このコンクリート打設のためのミキサーカーの工事現場への出入りは、工事再開前の三月、四月は一日平均四〇台程度であり、工事再開後は、被告は工事の遅れを取り戻すため、昭和六三年五月一九日、同年六月三日のように、多い日で約一〇〇台の出入りを予定したほか、実際にも一階等の低層階を行う際には、一日に六〇台程度、高層階を行う時には、一日二、三〇台程度の車両が出入りした。昭和六一年二月二日から三日にかけてのコンクリート打設の作業は、コンクリートが固まらず、深夜二時、三時にまで及び、右の日の他にも午後一〇時ころまで作業が続いたことは、少なくとも六、七回はあった。このころ深夜までに及ぶ作業があったことから、本件マンション建築対策協議会の抗議もあって、被告は作業工程表を原告らに渡したが、その工程表によっても、コンクリート打設の作業は午後一〇時まで行うことが予定されていた。
右に認められる本件マンションの建設工事の状況に<書証番号略>によると、原告らの家屋が、本件敷地境界線から僅かしか離れていないか、離れていても約6.5メートルの位置に建っていることが認められ、検証の結果によると工事中に原告広田の家屋に飛散したセメント様のものが付着したことが認められ、これらの事実を総合して考慮すると、本件マンションの工事中は、土埃が上がり、原告らは窓を開けることができないといった事態に至ったことを推認することができる。ただし、原告安田はその所有する家屋を貸していて、本件敷地の隣に居住していないことが認められるから、右のような粉塵の被害を被ったものとは認められない。
(2) 振動による被害
右(1)の事実、<書証番号略>、証人片山利明の証言及び原告前田武彦本人尋問の結果によると、工事用車両の轍がA棟と原告前田及び同安田の敷地との境界との間に見られたこと、C棟、B棟とA棟の間には工事中の資材を置かれていたこと、工事人が通勤に使用する自家用車等は本件敷地北西部、完成後には公園となるスペースに駐車していたこと、この間の掘削工事では、掘削に使用した大型車両の通行によって原告らの家の窓ガラスがその振動音によりピリピリという音を立てていたこと、このような大型車両の音に耐えきれずに外出する者もあったことが認められる。ただし前記のとおり原告安田は、その所有する家屋を貸しており、本件敷地の隣に居住していないから、右のような振動による被害は認められない。
(3) 騒音による被害
<書証番号略>、証人片山利明及び同山田紀子の各証言並びに原告前田武彦及び同加地義各本人尋問の結果によると、被告の工事日程表では、作業時間は午前七時三〇分からを予定していたこと、しかし工事は午前七時ころから始められ、夜は午後七時か八時ころまで続けられたことがあるほか、作業開始時間前にも通勤してきた工事人がカーラジオを大きな音で鳴らしていたこと、工事完成が遅れて被告は本件マンションの完成を急いでいたことがそれぞれ認められ、これらの事実に前記(1)の事実を総合すると、原告らは工事による騒音のために生活の平穏を害されたものと推認される。ただし、前記のとおり原告安田はその所有する家屋を貸しており、本件敷地の隣に居住していないから、右のような騒音の被害は認められない。
(4) 悪臭による被害
<書証番号略>及び原告加地義本人尋問の結果によると、本件敷地北西側が工事人らの通勤用の駐車場になったことが認められ、この事実と前記(1)認定の大型車両が多数本件敷地に出入りしたこと及び原告らの家屋と本件マンションとの接近した位置関係を考慮すると、排気ガス、防水用のコールタールの臭いが原告らの家屋に達したことを推認することができる。ただし原告安田については、前同様の理由により、右のような悪臭の被害は認められない。
(5) 交通の危険等による被害
<書証番号略>及び原告前田武彦本人尋問の結果によると、本件マンションの面する三条通りは交通量が多いこと、本件マンションの南側に京阪バスのバス停があること、本件工事によって多数の車両が本件敷地に出入りしたことが認められ、三条通りの幅員が比較的狭いことを考慮すると、本件マンション工事によって、ある程度交通の危険が生じたものと推認される。
(6) プラシバシーの侵害
<書証番号略>、検証の結果、証人山田紀子の証言、原告前田武彦及び同加地義各本人尋問の結果によれば、本件工事により原告加地の家では、工事人から家の中が見えるため、風呂場にブラインドを取り付けて目隠しをし、二階南側にあった娘の部屋を二階の真ん中の部屋にかえたこと、工事中に本件マンションの工事人と目が合うことがあったことが認められる。
(二) 完成後の被害
(1) 日照被害
<書証番号略>及び証人片山利明の証言によると、原告細川宅は本件マンション敷地の西側に位置し、同敷地境界から最短距離で二メートル七〇センチメートル離れた位置に建ち、本件マンションに面する東側には、一階の八畳間和室とその東側に縁側が設けられていることが認められる。
<書証番号略>及び証人片山利明の証言によると、原告奥村宅は、本件マンション敷地の西側に位置し、同敷地境界から四メートル六六センチメートル離れた位置に建ち、本件マンションに面した東側には、一階には和室八畳間及び六畳間、二階には和室六畳間二間があり、それぞれの部屋に開口部があることが認められる。
<書証番号略>及び証人片山利明の証言によると、原告山田宅は、本件マンション敷地の西側に位置し、同敷地境界部分から六メートル四センチメートル離れた位置に建ち、本件マンションに面する東側には、一階に和室六畳間及び四畳半、二階に和室六畳間及び四畳半があり、一階では開口部が二つ、二階ではそれぞれ開口部が一個存在することが認められる。
<書証番号略>及び証人片山利明の証言によると、原告澤村宅は本件マンション敷地の西側に位置し、本件敷地に接近して建てられており、本件敷地境界と同原告家屋の間には境界に接近しすぎて立入ることができない部分がある他、境界から一番離れている部分でも一メートル五三センチメートル程度であり、本件マンションに面する東側には、洗面所、浴室及び和室六畳間があり、マンションに向って開口部が一ヵ所存在することが認められる。
<書証番号略>及び証人片山利明の証言によると、原告広田宅は本件マンション敷地の西側に位置し、同敷地から五〇センチメートル離れた位置に建ち、本件マンションに面する東側には台所と和室二畳間があり、和室に開口部一ヵ所と台所には窓が設けられていることが認められる。
<書証番号略>及び証人片山利明の証言によると、原告加地宅は、本件マンションの北側に位置し、本件敷地境界に接近したところ或いは九二センチメートル離れた位置に建ち、本件マンションに面する南側には、一階には和室四畳半と浴室が、二階には洋室一間があり、それぞれの階に開口部一ヵ所ずつあることが認められる。
<書証番号略>及び証人片山利明の証言によると、原告前田宅は本件マンションの東側に位置し、本件敷地境界に接近して建てられており、本件マンションに面する西側には、一階には和室六畳間が、二階には和室四畳半、階段、床の間、たんす置場が設けられているが、二階の廊下部分に灯り採りの窓がある他に開口部はないことが認められる。
<書証番号略>及び証人片山利明の証言によると、原告安田宅は本件マンション東側に位置し、同敷地境界から四九センチメートル離れた位置に建ち、本件マンションに面する西側には、台所、押入等が面しているが、開口部は設けられていないことが認められる。
<書証番号略>によると、被告の作成したグランドレベル四メートルの日影図上、冬至の日に、本件マンション西側に存ずる原告細川宅、同奥村宅、同山田宅は午前一〇時には本件マンションの影を脱して日が射し込み、同じく東側にある同澤村宅、同広田宅は午前一〇時ころには日が射し始める。本件マンション東側に存ずる同前田宅及び同安田宅は、午後二時ころから本件マンションの影に入り始める。本件マンション北側に位置する同加地宅は、午前九時から本件マンションの影を脱し、午前一〇時には完全に日が射し、午後一時ころから本件マンションの影に入り始め、午後二時にはほとんど影に入ってしまうことが認められる。
<書証番号略>、証人山田紀子の証言並びに原告前田武彦及び同加地義各本人尋問の結果によれば、以下の事実を認めることができる。
原告らが作成したグランドレベル〇メートルの日影図によると、冬至の日に、本件マンション西側に存ずる原告細川宅が午前九時三〇分ころから日が射し始め、同奥村宅は午前九時三〇分を過ぎてからでないと日が射さず、同山田宅は午前一〇時三〇分ころから日が射し始め、同じく西側にある同澤村宅、同広田宅は午前一〇時三〇分ころを過ぎないと日が射さず、本件マンション東側に存ずる同前田宅及び同安田宅は、午後一時三〇分ころから本件マンションの影に入り始め、本件マンション北側に位置する同加地宅は、終日日が射さない状態となること、各原告らの家屋では、従来より日照時間が減り、以前より湿気が多くなったこと、庭に日が射さなくなり、洗濯物が乾きにくくなった。
しかし、同安田は本件マンションに隣接している家屋に居住しておらず、原告安田には、日照を遮られたという被害は発生していない。
(2) 眺望の侵害、圧迫感
先に認定した本件マンションの構造、原告らの家屋と本件マンション境界との距離、及び検証の結果によれば、本件マンションが原告らの家屋の前にそびえたち、原告らの眺望を従前に比べて害している事実は認めることができる。
(3) 災害の危険
証人山田紀子の証言によれば、以前に発生した火災の際に本件敷地から消防車が進入した事実は認められるが、現実に本件マンションの建設によって原告らの身体財産に被害を及ぼす危険を認めるに足りる証拠はない。
(4) プライバシーの侵害
<書証番号略>、検証の結果並びに原告前田武彦及び同加地各本人尋問の結果によれば、原告らの家屋は本件マンションの眼下に存在するものであり、前記に認定した原告ら家屋と本件敷地の距離、本件マンションの隣接地境界からの距離を併せて考慮すると、本件マンションの居室から、原告らの家屋の内部が見えることが認められる。
(5) 騒音の被害
<書証番号略>、検証の結果及び証人山田紀子の証言並びに原告前田武彦及び同加地義各本人尋問の結果によると、原告らの家屋から本件マンション住民の話声、三条通りの音が聞こえるということが認められる。
(6) 風害
証人山田紀子の証言によれば、本件マンションの建設後、二階のガラス戸が落ちる、洗濯竿がはずれたといったことがあり、原告加地義本人尋問の結果によれば、加地宅でも洗濯物が飛んだという事実が認められる。
(7) 土地建物の価値の低下
以上認定した本件マンション建設による数々の原告らに対する不具合からすると、抽象的には原告らの土地建物の価値の低下が十分推測されるが、具体的に算定することは現段階では不可能である。
(三) 家屋の損傷
<書証番号略>、証人片山利明及び証人荒木正亘の各証言並びに検証の結果によると次の事実を認めることができる。
工事前に被告が下げ振りを利用して測定した沿道家屋調査結果によると、原告前田宅において、別紙図面2イの地点において工事前には西に七ミリメートル、南に三ミリメートルの傾きであったものが、工事後には西に二二ミリメートル、南に二ミリメートルの傾きとなり、同図面ニの地点において西に九ミリメートル、北に六ミリメートル傾いていたものが、工事後は西に一八ミリメートル、北に六ミリメートルの傾きとなり、同図面ホの地点において工事前は東に五ミリメートル、北に二ミリメートルの傾きであったものが、工事後は西に一一ミリメートル、北に二ミリメートルの傾きとなり、同図面への地点において西に七ミリメートル、南に一ミリメートル傾いていたものが、西に一六ミリメートルの傾きとなり、同図面トの地点において東に四ミリメートル、北に一ミリメートルの傾きが、工事後は西に八ミリメートル、北に一ミリメートルの傾きとなった。これらの各地点における傾斜の度合いからいうと、全体として、前田宅は、本件工事後には工事前より最大沈下四〇ミリメートルに達する程西に傾斜したといえる。
このように前田宅が西に傾いたことによって、被告が本件マンション工事前に撮影した沿道建物事前調査報告書(<書証番号略>)添付七八番の写真と原告らが工事後に撮影した建物調査報告書(<書証番号略>)添付の①②の写真を比較すると、前田宅二階北側窓下のひびは本件マンション工事により拡大したことが認められ、それとともに無目が弓なりに曲ったことも認められる。
その他にも二階階段踊場西側壁面に検証調書添付写真七三号にみられるように、壁面にひびが走っているが、被告の作成した報告書にはこのひびの写真がなく、被告が報告書を作成するにあたっては、発見できたひびや汚損等を細かく写真に撮影していることからみて、この報告書にないひび等は工事前にはなかったものということができ、工事後に行われた検証においてこのような写真が撮影されたということは、このひびは本件マンション工事によって発生したものということができる。
さらに本件工事着手後に、ちり切りに隙間発生、玄関北側壁面にもひびが入った。
同山田宅は、別紙図面3ニの地点において西へ七ミリメートル、南へ一ミリメートルの傾きであったものが、工事後には西へ一三ミリメートル、南へ一ミリメートルの傾きとなっており、同図面への地点において南一ミリメートルの傾きであったものが工事後は西へ六ミリメートル、北へ二ミリメートルの傾きとなっている。これら各地点の傾斜の程度からいうと、山田宅は、西へ傾いたといえる。
右に対し、被告は、本件マンション工事で原告山田宅の東側の土地を掘削したものであり、同山田宅が本件マンション工事により、西に傾くことは不自然であると主張するが、証人荒木正亘の証言にもあるように、山田宅の屋根の骨組がしっかりしているため、本件マンション工事により地盤は東側にずれ、屋根部分は固定されることになったため、柱の下部が東へ引張られることで西側に傾いたものということができ、山田宅が西へ傾くことが必ずしも不自然とはいえない。
その他にも、原告山田宅は、検証調書添付写真六〇号と<書証番号略>添付写真四八番を比べてみると、天井部分に汚損が生じており、これは、家屋の瓦がずれ雨漏りがしたと認められる。
奥村宅は、別紙第四図面ロの地点において東に四ミリメートル、北へ一〇ミリメートルの傾きであったが、工事後には東へ一一ミリメートル、北へ一三ミリメートルの傾き、同図面への地点において東九ミリメートル、南へ四ミリメートルの傾きであったものが工事後には、東へ一三ミリメートル、南へ一〇ミリメートルの傾きとなり、同図面チの地点において東一二ミリメートル南一ミリメートルの傾きであったものが東二二ミリメートル南八ミリメートルの傾きとなっており、同図面リの地点において工事前は東一二ミリメートル北一〇ミリメートルであったが本件工事後には東二六ミリメートル北一三ミリメートルの傾きとなった。これらの地点における各傾斜を総合して考えると、奥村宅は東に傾斜したと認められる。
原告奥村宅は、検証調書添付写真五〇号によると、奥村宅の縁側部分は弓なりになり、東南角部分が沈下している。右のほかに原告奥村は、壁にひびが生じたと主張するが、前記<書証番号略>添付写真一〇二番及び一〇三番と検証調書添付写真五二号を比較すると、原告奥村の主張するひびは、本件工事前から発生していたものであり、本件工事による被害と認めることはできない。
(四) 安田宅は、沿道建物事前調査報告書(<書証番号略>)添付写真三六番と検証調書添付写真二九及び三〇号を比べると、家屋西側壁面向って右側に存するひびは工事前からあったことが認められ、本件工事によって発生したものではない。次に、右沿道建物事前調査報告書添付写真三七番及び三九番と検証調書添付写真二八号及び三〇号を同じく比較すると、このひびについても工事以前に存したものと認められ、本件マンション工事によって発生したものではない。検証調書添付写真二九号屋根下の亀裂及び塗料の剥離及び検証調書添付写真三一号に見られる西南屋根下の亀裂は被告が工事前に撮影した報告書には写真撮影されていないことから本件工事後に発生したものと認めることができる。さらに検証調書添付写真七九号によれば原告安田宅のひさし部分の白壁が落ちたことが認められる。
以上の事実を総合すると、原告前田宅、同山田宅、同奥村宅、安田宅における各傾斜は、工事後に傾き度合いがきつくなっていること、工事の期間に原告らの家屋が急激に傾くような何らかの外力が原告らの家屋に加えられたことが認められないことからも、本件マンション工事によって生じたものということができる。
三被告の責任について
一般に土地の使用者がその地上に建物を建築することは適法な行為であって、これにより隣接家屋に騒音、振動、悪臭、交通の危険等が生じても、それだけで直ちに不法行為が成立するものではない。しかし、すべての権利の行使は、その態様ないし結果において社会観念上妥当と認められる範囲内でのみこれをなすことが許されるところ、権利者の行為が社会的妥当性を欠き、これによって生じた損害が社会生活上一般的に被害者において認容するを相当とする程度を越えたときは、その権利行使は社会観念上妥当な範囲を逸脱したものというべきであり、いわゆる権利濫用にわたるものとして違法性を帯び不法行為責任を負うものと解するのが相当である。
これを本件について検討するに、工事中の原告らに発生した被害のうち、前記二(一)で認定したとおり工事中の粉塵、振動、騒音の被害が原告安田を除いた原告らに生じたこと、これらは本件工事に使用された大型車両等の通行によって生じ、工事後にも本件工事によって飛散した物の痕跡が残り、窓ガラスが響く程の振動があったこと、工事が深夜に及ぶことが一回、午後一〇時に及ぶことも被告側が認めた回数で六回から七回あったことを考慮すると、隣接地の居住者である原告らが通常受忍しなければならない程度を越えた被害が発生したものといえる。
他方、悪臭や交通の危険、プライバシーの侵害については、隣接した地で工事が行われた場合に生じうる程度のものであり、特に本件工事によって重大な被害を被ったという事実を認めることができず、いまだ受忍限度を越えて被害が発生したということはできない。したがって、これらの点については、被告に法的な責任を負わせることができないものというべきである。
次に本件マンション完成後に原告らに発生した被害のうち、日照被害に関しては、前記に認定した事実によれば、本件建物は建築基準法上の日影規制に適合していること、本件敷地のある周辺は都市化が及び始めた地域であり、本件マンションのため、被告らの家屋の庭に日が当らなくなったという事実は認められるものの、本件マンション東側及び西側に位置する原告細川宅、同奥村宅、同山田宅、同澤村宅、同広田宅、同前田宅及び同安田宅は、午前中日が射し始める時間が遅れるか、あるいは、午後日陰になる時間が早いかのどちらかであり、同安田宅は西側に開口部がないほか、同安田は本件マンションに隣接している家屋に居住しておらず、そのほか原告前田は廊下の灯り採りの窓しかマンションに面して開口部がなく、同澤村宅は南側が隣家と接して建てられているため日照の確保が難しくなっている面もあること、本件マンションの床面積からもわかるように本件マンションはセットバックになっていること等を併せ考えると、日照をある程度確保できているものであり、日照が充分に採れない原因の一端は原告らの家屋構造にもあり、本件マンションによる日照阻害は受忍限度内というべきである。
また、本件マンションと原告らの家屋の距離及び本件敷地周辺が都市化されつつある地域であることを考えると、原告らのプライバシー侵害は今日における社会生活上は、受忍限度内と判断される。
さらに、本件敷地はそもそも高さ二〇メートルまで建築が可能であること、原告安田、同前田らの家屋自体が境界に迫って建てられていることを考慮すると、本件マンションが原告らに対して与える圧迫感及び眺望を侵害する点は、受忍限度内といえる。
四原告らの損害
1 慰謝料
前記三で判断したとおり、工事中の粉塵、振動及び騒音による原告ら(但し原告安田を除く)の被害は受忍限度を越えており、この精神的肉体的苦痛を慰謝するに足りる金額は各二〇万円が相当である。
2 家屋の損傷
<書証番号略>によれば、原告前田宅の家屋の歪みを直し、壁に生じたひびを補修する費用として、三八二万九七〇〇円を要し、同奥村宅の家屋の歪みを補修する費用として、一一五万八六〇〇円を要し、同山田宅の家屋の歪みを補修する費用として、一九九万四〇〇〇円を要し、同安田宅のケラバの落下、壁に生じたひびを補修するために、一七五万二九〇〇円を要することが認められる。
但し、証人荒木正亘の証言及び弁論の全趣旨によると、原告安田宅は、賃貸用家屋であるということから家屋の普請自体が弱いものとなっていることが認められ、同安田宅の損害の全てが本件マンション建設に起因するとはいえない。よってこれを考慮すると、本件工事が原告安田の家屋の損傷に及ぼした割合は五割であると認めるのが相当である。同じく、証人荒木正亘の証言及び弁論の全趣旨によると、原告奥村宅は、家屋が建てられて約八〇年余り経っており、同奥村宅の損害の全てが本件マンション建設に起因するとはいえない。よってこのような家屋の老朽化を考慮すると、本件工事が原告奥村の家屋の損傷に及ぼした割合は四割であると認めるのが相当である。
3 弁護士費用
原告らが本件訴訟代理人らに本件訴訟の追行を委任し、その際に手数料及び報酬としてそれぞれ原告の損害額の一割を支払うことを約したことは、弁論の全趣旨により明らかであるところ、本件訴訟の事案の難易、審理経過、請求認容額等に鑑み、本件不法行為と相当因果関係を有するものとして被告に請求しうべき弁護士費用の額は、それぞれ原告の損害額の一割とするのが相当である。
五結び
以上の事実によれば、被告に対し、原告加地義、同細川晃平、同澤村秀雄、同広田夏夫は各二二万円、同奥村秀雄は七二万九七八四円、同山田達雄は二四一万三四〇〇円、同前田武彦は四四三万二六七〇円、同安田孝之は九六万四〇九五円及び右各金員に対する訴状送達の日の後である昭和六三年一二月二三日から支払済みに至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度において原告らの請求を正当としてこれを認容し、その余の請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用し、仮執行免脱宣言については相当でないからこれを付さないこととして主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官下村浩藏 裁判官大野勝則 裁判官梶美奈子)
別紙
一、京都市右京区嵯峨朝日町二番三
宅地 7646.94平方メートル
二、右同所同番地
家屋番号八二番の三
鉄筋コンクリート造り地下一階地上七階建て
共同住宅、店舗
地下一階
161.2575平方メートル
地上一階
2696.5672平方メートル
二階
2324.2443平方メートル
三階
2204.72925平方メートル
四階
2437.91925平方メートル
五階
1832.64475平方メートル
六階
1761.05975平方メートル
七階
1460.12675平方メートル
別紙
別紙第二図ないし第四図<省略>